先日、顧問先での打合せの帰り道、鎌倉駅と江ノ電の和田塚駅の間に、目を引く古民家を見つけました。江ノ電越しにみると、キチンと手入れがされた古民家でお店が営業していて、その奥にちょっとした広場と新築の建物が建っている不思議な空間なんです。
共同住宅 【ー 御成ふくろ小路 ー にたつ3軒長屋 ー 御成となり ー】
ふと、気になって調べてみると、なんと公益財団法人日本デザイン振興会が運営しているグッドデザイン賞(2019年度)を受賞している【共同住宅 [ー 御成ふくろ小路 ー にたつ3軒長屋 ー 御成となり ー]】というプロジェクトということが分かりました。
そこで、今回は、その事業主体である(株)林屋材木店の林祥一社長に、御成ふくろ小路ができるまでを伺う機会を頂戴しました。
御成ふくろ小路の建物は、昭和初期に建てられ老朽化が進んでいた中、東日本大震災後、取り壊しを含め検討されたそうです。しかし、取り壊して土地を売却するにしても、ふくろ小路への接道の問題があったため、進まなかったとのこと。
そのような中、鎌倉市との綿密な協議を経て接道が解決したことから開発が進み、4棟の古民家が再生され、3棟が新築されました。ふくろ小路の開発に当たっては、これまで古民家の間にあった塀を取り除き、新築棟と古民家が広場を取り囲むように配置され、広場を通して利用者同士の交流が生まれるように配慮されたとのことでした。
現在ふくろ小路には、美容室、生活雑貨、幼児教育、ピラティススタジオ、ITベンチャー企業などが軒を並べています。業種・年齢層含め幅広い人達が行き来するようになり、様々な交流が生れています。「長屋」という言葉に込められた、人と人が触れ合う温かさを感じる場所に育てていきたいという熱意を強く感じます。
現地に足を運んでよく見てみると、敷地の隅に井戸を見つけました。林社長にお聞きしたところ「鎌倉石を組み合わせて作られた井戸は、頑丈でとても貴重なモノなので、壊すのが勿体なくて残しています」ということでした。こうした井戸のような日常生活に密接するところにもかつての技術が見られる点も面白いですよね。
古民家再生で気をつけたこと
お話を伺う中、林社長は、古民家を活用するに当たっては、「なぜその建物を残すのかという理念がないと古民家が地域の中になじまないものになってしまう」ともおっしゃっていました。地域の景観含め存在価値を考えることも、大切なポイントだということでした。
今回お話をお聞きしながら建物を拝見する中、<リノベーション>という言葉の持つ「再生」という意味には、「価値を、見つめ直す」という意味でもあるのではと思いました。古い街「鎌倉」だからこそ、「古さ」の中に今の時代との共生できる接点をみつけながら受け継いでいるのではないかとも感じました。
不動産に関わる弁護士として、こうした<古さ>を見つけ直すということも、どこか気にかけながら日々の仕事と向き合っていきたいと思うことができた1日でした。
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